3年にわたる戦争を経て、ロシアとウクライナは一時的な部分停戦協定に合意した。平和の実現にはまだ遠いが、この協定で第一歩を踏み出したことは確かである。しかし、トランプ政権が推進したこの第一歩が最終的な成果を生むか、また協定がどの程度実行されるかは依然として不透明である。一方、最近の情勢はやや緩和しているものの、戦闘は続いている。この3年以上続く戦争は、どのような結末を迎えるのか。
30日間のエネルギー停戦協定のもとロシアとウクライナは戦闘を続けながら最大の利益を模索している。
著名な軍事チャンネルの司会者である周子定氏は、新唐人テレビの番組「菁英論壇」で次のように述べた。「先週、30日間のエネルギー施設に関する停戦協定が初めて意向としてまとまった。要するに、二つの側面がある。一つは30日間エネルギー施設への攻撃を停止すること。もう一つは黒海での停戦、つまりお互いに攻撃しないということである」
協定成立当日にロシアがウクライナ東部ドンバス地域のエネルギー施設をミサイルで攻撃したとの報道があった。その夜、ウクライナも100機以上の無人機を投入し、ロシアの製油所を攻撃した。このように、過去1週間、両国間では毎日のように攻撃が続いている。正確に言えば、双方とも停戦協定を守っていない状況である。
周子定氏によれば、アメリカ、ウクライナ、ロシアの中で最も和平協定を望んでいるのはアメリカであり、ウクライナとロシアは停戦協定を結ぶ意欲がアメリカほど強くないという。
まずロシアについて述べる。3月24日、アメリカとロシアはサウジアラビアで12時間にわたる会談を行い、25日にはさらに長時間の会談を重ねた結果、いわゆる黒海停戦協定に合意した。
実際、双方は多くの問題について交渉を行ったが、黒海協定は非常に基本的なものであり、比較的容易に合意できる内容であった。それにもかかわらず、双方がこれほどの時間をかけた理由は、ロシアがこの機会を利用してより多くの交渉材料を獲得しようとしていることを示している。
例えば黒海協定には前提条件として、西側諸国によるロシア国営農業銀行や農産物・肥料輸出関連企業への制裁解除が求められている。
一方でウクライナ側はロシアへの信頼感を欠き、将来への懐疑心や感情的な国への敵討ちと家族への復讐心が影響している。そのためウクライナが望む北大西洋条約機構(NATO)への加盟は現時点では実現できていない。このような状況から平和を実現する立場として最も積極的なのはアメリカである。
周子定氏によれば最近の戦場での大きな変化はクルスク地域に見られ、一週間以内に戦闘はほぼ終息しロシアは大部分の失地を取り戻した。しかし過去1週間でも小規模な戦闘が続いており、クピャンスクからライマンさらには南部ザポリージャ地域にかけて散発的な衝突が発生している。主にロシア軍による攻勢だが、クルスク地域ではウクライナ軍も攻撃している。
一週間前にはウクライナ軍がベルゴロド地域に進入したものの、大きな前進は見られなかった。周子定氏は「大規模な攻勢には発展しないだろう」と述べている。ウクライナ軍には十分な兵力がなく、この動きは主に外交的圧力やロシア軍への注意分散を目的とした小規模なゲリラ作戦と考えられている。このため戦争自体は続いているものの、その規模は以前よりも縮小している。
ヨーロッパ諸国とアメリカについて
テレビプロデューサー李軍氏によれば、この一時的な停戦はトランプ政権による必死の努力によって実現したものである。
一方ヨーロッパ諸国では「停戦が平和につながること」を望む声が共通して存在する。しかし現在ヨーロッパではプーチン大統領への不信感とトランプ大統領が本当にウクライナの利益を守るかどうかへの疑念が渦巻いている。
イギリスのキール・スターマー首相は停戦に慎重に支持を表明し、「ロシアが停戦に同意する必要がある」と強調した。フランスのマクロン大統領は「停戦はロシアに息継ぎの時間を与える可能性がある」と指摘する。ドイツの国防相は「ロシアは本気で平和を求めているわけではない」と述べた。
また、ドイツのショルツ首相は「ドイツは引き続きウクライナへの軍事支援を行う」と表明する。欧州連合(EU)の外交政策責任者ジョセップ・ボレル氏も「ロシアには実質的な譲歩をする意思がない」と述べる。
李軍氏は「トランプ大統領がプーチン大統領と交渉すること自体が難しい」としながらも、「最終的にはプーチン大統領もトランプ大統領との関係を維持しつつ停戦に向かう可能性がある」と見解を示している。ただし、「プーチン大統領は十分な利益を得るまで手を引かないだろう」とも指摘する。
短期的な和平条約の達成は難しい
短期的な和平条約の達成が難しい理由について、ベテランジャーナリストの郭君氏は「短期的に和平条約を達成することは難しい」と述べ、朝鮮戦争時代の例を挙げる。当時も双方とも和平交渉には消極的だった。郭君氏は「現在も同様に長期化する可能性がある」と警鐘を鳴らす。
現在のロシア・ウクライナ戦争は新たな時代の幕開けを告げ、「新冷戦」と呼ばれるかもしれない。両国とも停戦を望まず、交渉が長引く可能性が高い。
郭氏は現在、アメリカが特に平和の回復を望んでいると述べた。アメリカについて語る際には、朝鮮戦争の歴史に触れることが重要である。朝鮮戦争ではアメリカは多くの資源を投入せず、当時アジアでの大規模な作戦を避けていた。そのため、アメリカは停戦を望んでいた。これはアメリカの戦略的な焦点がヨーロッパにあったからである。
当時、アジア太平洋地域では日本は廃墟と化し、中国は共産党に支配されていた。強力な同盟国や軍隊が存在せず、アメリカの戦略はアジアでは防御的であり、ヨーロッパではより積極的だった。ヨーロッパには多くの同盟国があり、戦略的な深みも大きいため、アメリカはヨーロッパの復興を重視していた。
現在の状況は少し似ているが地域は逆転している。アメリカの戦略的焦点はアジア太平洋地域に移り、「インド太平洋戦略」が実施されている。最大の敵は中国共産党であり、この地域には最大の脅威も存在している。
日本、韓国、オーストラリア、インドが強力な連携を形成している一方、ヨーロッパではロシアは自国の境界付近でしか力を発揮できず、ヨーロッパやアメリカを脅かすことはできていない。そのため、アメリカはヨーロッパでの衝突を早期に終結させ、アジア太平洋地域に力を移すことを望んでいる。
ロシアとウクライナはどちらも戦場で戦う意向を持ち、少しでも勝利を収めれば将来の交渉で有利になると考えている。ロシアも疲弊しているがヨーロッパやアメリカにはそれぞれ内部問題がある。 内部政治情勢が有利に変化する可能性があるため時間をかけることで新たな展開が生まれるかもしれない。
ヨーロッパ諸国のスタンスと課題
ヨーロッパの状況は非常に複雑である。まずヨーロッパは武力による領土変更を拒否し、そのような先例を望んでいない。しかし冷戦後にはこのような状況が何度も発生した。特に旧ユーゴスラビアは6〜7つの国に分裂し激しい争いが繰り広げられた。最終的に決定権を握ったのは北大西洋条約機構(NATO)であったのは、彼らが最も強い力を持っていたからである。
郭氏によればヨーロッパにはもう一つ問題がある。それは欧州連合(EU)の加盟国が合意を形成できないことである。EUは27か国から成り、一票否決制を採用しているため共同体として力を発揮するのが難しい状況である。さらにヨーロッパにはアメリカから独立したいという願望も存在している。
第二次世界大戦後ヨーロッパは真の独立を果たさず軍事的にも政治的にもアメリカに依存してきた。
EUは設立当初「石炭鉄鋼共同体」としてフランスとドイツの提案により誕生した。両国はルール地方を巡る歴史的対立を抱え、この地域には石炭と鉄鉱石が豊富で重工業や軍事産業にとって不可欠だった。特に第二次世界大戦中その重要性は際立っていた。
この背景から大戦後、フランスと当時の西ドイツは石炭と鉄鋼産業で協力しこの共同体を設立した。その後この共同体は拡大しヨーロッパ経済共同体を経て現在のEUへと発展した。このためEUの中心的要素はフランスとドイツの連携である。
フランス人にとってアメリカ人がヨーロッパ大陸にいることは非常に不快である。NATOについてフランスは二度脱退し再度、二度加入している。これは独立した軍事統制権を失いたくないからである。このためフランスはNATOメンバーでありながらその統一軍事指揮には従っていない。またフランスは独立した武器システムと軍需産業を持ち将来的にはヨーロッパが完全に自立しアメリカへの依存から脱却することを目指している。
この背景からウクライナ戦争問題についてフランス人やドイツ人はアメリカへの完全な依存を望んでいない。特にアメリカの政治的影響力への全面依存を避けたいと考えている。しかし現実にはヨーロッパでは単独で十分な影響力を持つ国が存在していない。
郭氏によればEU経済力と軍事的潜在能力は非常に強力だ。しかしソ連解体後直接的な外部脅威が消えたため内部統合の必要性が薄れている。このウクライナ戦争について多くのヨーロッパの政治家たちは歴史的チャンスだと考え、この機会を簡単には手放したくないと思っている。
ロシア・ウクライナ戦争の未来の示唆 無人戦闘と宇宙技術の勝利の組み合わせ
周子定氏はロシア・ウクライナ戦争において、無人艇、無人機、低軌道衛星技術がもたらす影響を指摘する。
ウクライナは海軍力が乏しいが、大量の無人艇を活用することでロシア黒海艦隊の活動を制限している。無人艇は低コストで製造可能であり、短期間で大量生産が可能なため、制海権確保に寄与する。
無人機には海中遊泳型と空中飛行型が存在し、開戦初期から偵察や攻撃に活用されている。これにより戦争の様相は大きく変化した。
低軌道衛星技術の進展は無人艇や無人機の運用をさらに効率化している。スターリンクのような高速通信システムは遠隔操作を容易にし、現代戦争における重要な要素となっている。
これらの技術は未来の戦争態勢において重要な役割を果たすと考えられる。
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