ミャンマーで3月28日に発生したマグニチュード7.7の大地震により、タイの首都バンコクで建設中だった33階建てのビルが一瞬で完全に倒壊した。
これまでのところ少なくとも11人の死亡が確認され、76人が行方不明になっている。
震源地から約1千キロも離れていたにもかかわらず倒壊したことや、それがバンコクで唯一崩壊したビルとなったことなどから、「手抜き工事が行われたのではないか」と各方面から指摘されている。

倒壊したビルは建設中(屋上部分はすでに完成)のタイ国家会計検査院の新庁舎で、中国国有企業「中国鉄路工程総公司(CREC)」傘下の「中鉄十局」とタイの最大手総合建設会社ITDが共同で施工を担当していた。

タイ政府は徹底調査の声明を出しており、タイのエーカナット・プロムパン工業相は、3月30日にチームを率いて倒壊したビルのがれきの中から建材サンプルを採取し、現場で検査を行った。
プロムパン工業相は「このビルには基準に満たない鋼材が使用されていた可能性がある」と指摘し、「タイの工場で中国から来た旧式の鋼材生産設備を使って生産した結果、品質が基準に満たない鋼材が市場に出回っている」と明かした。
ずさんな管理体制
このビルは2020年に着工し、2026年の完成を予定していた。しかし、今年1月時点でわずか30%しか工事が進んでいなかった。
タイの反腐敗団体のMana Nimitmongkol主席は3月30日、ロイターに対し、次のように指摘した。「うちの団体はビルの施工期間中、何度も現地へ調査しに行っている。工事遅延や労働者不足などの問題が存在し、手抜き工事を行っていた疑いがあった」
(建設中のタイ国家審計署の新庁舎が倒壊する様子)
不審な動き 中国人4人が書類の持ち出し未遂で逮捕
ビルの崩壊現場はバンコク市政府によって「災害管理区域」に指定され、許可なく立ち入ることは禁じられた。しかし、地震の翌日の3月29日、4人の中国人男性が無断で侵入し、32件の書類を持ち出そうとしたところを逮捕された。
現地警察によると、逮捕した中国人たちは現場に関係する建設会社の従業員だった。押収した書類には建築請負契約書、設計図面、施工指示書などが含まれていた。

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