比較的、安全性が高いとされているEV(電気自動車)。しかし中国製EVに限っては安全性ではなく「危険性」を警戒しなければいけないと思わせるような事件がまた発生した。
今回、問題視されているのは、中国スマホ大手シャオミ社2024年3月に発売された電気自動車のSU7だ。
3月29日夜、中国安徽省の高速道路でSU7がコンクリート製の中央分離帯に衝突した後、炎上し、乗車していた女子大学生3人が死亡した。
ネット上に流出した事故当時の映像には、激しく炎上する様子が映っている。目撃者によれば、消防や警察が現場に到着するまでに1時間以上を要し、その間、車両は燃え続けたという。
事故の後、炎上している車のドアは開かず、運転席と助手席の2人は焼死し、骨しか残らなかった。後部座席の1人は市民によって割られた窓から救出されたが、病院に向かう途中で死亡した。

死亡した3人は大学4年生で、公務員試験を受けるために安徽省へ向かう途中だった。
遺族は中国メディアに対し「事故の後、車のドアがロックされ、中にいた者たちは脱出できず生きながらに焼き殺された」と訴え、「シャオミは未熟な技術の車両を市場に投入し、人々の命を危険にさらしている」と怒りを露わにしている。
しかし、こうした遺族による事故関連投稿やネットユーザーからの車の品質を疑問視する声は中国のネットでは封殺に遭っている。事故について、一部中国メディアが取り上げ報道していたが、一部のメディアには「事故を報道するな」との指令が当局からきていたという。
(遺族による追究)
事故の後、シャオミは公開声明を発表しているが、そこには「車が衝突した後、なぜドアのロックが解除されなかったか」といった点について言及されていない。
遺族によるメーカーへの責任追及により、中国国内で波紋が広がっており、検閲に遭いながらも世論の声は大きい。
プレッシャーに耐えきれずシャオミは事故の数日後に事故発生時の状況を以下のように説明した。
・車両は衝突前(2秒前まで)は自動運転支援機能を作動させて時速116キロで走行していた。
・車は前方で道路工事が行われていたため車線変更しようとした際に障害物を検知して運転手に対し手動モードに切り替えるようアラームを鳴らし自動で減速を始めた。
・アラームを聞きドライバーが運転を引き継いだものの、制御できず衝突した。
このシャオミの説明に対し「衝突の2秒前にやっぱり手動で運転しろと言われても、もう間に合わない」といった声も多い。
また声明でシャオミは「事故の被害者の家族と連絡を取りあっており、全力で支援する」と書いていたが、声明が出てからすぐ遺族はSNSを通じて「事故が起きたから現在まで、シャオミからの連絡は一切ない」と反論している。
事故被害者の1人の母親は中国メディア「澎湃新聞」に対し、「シャオミの声明からはドアが開かなかった理由も、なぜ衝突した後に発火したのかといった肝心な問題について説明していない、明らかに避けている、私はただ真相を知りたいだけだ」と訴えている。
中国当局による事件の情報の抑え込みとネットでの言論封殺に加えて、シャオミ側の説明も世間を納得させる事はできず、同社の不誠実な対応もあいまって世論の怒りを引き起こし、シャオミの株価は急落した。

過去にも類似の事故
中国EVのこうした事故には枚挙にいとまがない。2024年4月、山西省でファーウェイ(華為)のEV「問界・M7」が炎上する事故が起きた。その時市民たちは車内に取り残された人員の救助を試み、車のドアや窓を開けようとしていたがロックされてどうしても開けられず、結局車内にいた3人は死亡した。
中国産EVのドアロックが事故時に解除されない設計になっていることは、かねてから問題視されてきた。
今回の事故を受け、ネット上では「またか」「このような設計は明らかに欠陥だ」といった怒りの声がまたしても殺到している。
中国製EVの急速な普及の裏で、安全性への懸念が拭えない現実がある。今回の事故は、その問題の深刻さを改めて世に知らしめる出来事となった。
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