台湾や韓国で、中国共産党(中共)によるスパイ活動が問題視されている。日本では、これらの国と比較して包括的な反スパイ法が存在しておらず、同様の事態への対応が課題として浮上している。
「中央社フォーカス台湾」によると、台湾高等法院(日本の高等裁判所に相当)は10日、台湾空軍に所属していた男性中佐と女性少佐の夫婦に対し、国家機密に関わる情報を中共の情報機関に漏洩したとして、それぞれ懲役47年と57年の判決を言い渡した。
この事件では、台湾軍の退役大佐が関与していたことが明らかとなっている。報道によれば、この退役大佐は現役だった2001年頃、義理の父の紹介で中共側の関係者と接触し、2013年に退役した後もその関係を維持。経済的に困窮している現役軍人らに接近し、情報提供に関与させていた。
今回の判決を受けた2人は、この退役大佐の勧誘を受け、機密情報を漏洩した。中佐は、2016年に賭博による借金を抱えていた時期に取り込まれたとされ、少佐も金銭的見返りを動機に2022年、中共側に録音データを提供したと報じられている。
台湾当局は、今回の事件を通じて、外国勢力による情報活動の深刻さを再認識するとともに、国家安全保障上の重要課題として引き続き警戒を強めている。
台湾では近年、スパイ活動に関与したとして起訴される件数が増加傾向にある。台湾の国家安全局(NSB)の報告によれば、中共の情報機関に関与したとして起訴された人数は、2021年の16人から2024年には64人へと増加。うち28人が現役軍人、15人が退役軍人であり、軍隊や政府機関、地域関連組織などへの浸透が確認されているという。
一方、韓国でも同様の事件が報じられている。2025年1月には、韓国の中央地域軍事裁判所が、機密情報を外部に漏洩したとして情報司令部幹部に懲役20年の判決を下した。同幹部は中共軍関係者に対し、7年間にわたり情報を提供していたとされる。
これらの事例は、経済的誘因や人間関係を通じて外国の情報機関が軍関係者に接近し、情報収集を図る実態を示すものとされる。台湾や韓国では、国家安全法や反スパイ法などを通じてこれらの行為に対応している。
一方、日本では、特定秘密保護法や自衛隊法などの規定があるものの、台湾や韓国のような包括的な反スパイ法は未整備のままである。このため、外国情報機関による活動への対応が難しいとの指摘もあり、専門家の間では法整備の必要性を訴える声が強まっている。
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