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トランプ氏 重要鉱物の調査を指示 中国依存からの脱却へ

2025/04/16
更新: 2025/04/16

トランプ米大統領は4月15日、重要鉱物およびそれに関連する製品の輸入に関する国家安全保障調査を命じる大統領令に署名した。これは、アメリカが外国、とくに中国に依存している現状が戦略的リスクとなっていないかを評価するもので、中国共産党(中共)が支配する世界の戦略資源サプライチェーンに対する直接的な対抗措置とみられる。今後、米中間の地政経済の構図に大きな変化をもたらす可能性がある。

大統領令では、外国のサプライチェーンへの過度な依存が、アメリカの防衛・インフラ・産業分野における深刻なリスク要因となっており、特に重要鉱物の加工やそれに関連する製品の領域での脆弱性が問題視されていると強調した。

こうした鉱物は、EV用バッテリー、マイクロプロセッサー、風力発電設備、軍用機のジェットエンジン、レーダーシステム、ミサイル誘導装置など、先端製造業や防衛産業を支える基幹部品に広く使用している。

今回の決定は、バイデン前政権が掲げた「中国依存からの脱却」の方針を引き継ぐもので、大統領令には「アメリカが外国からの供給に過度に依存することで、国家防衛、インフラ整備、技術革新が脅かされる可能性がある」と明記している。

「国内供給網の再構築は急務」

今回の大統領令では、「加工済みの重要鉱物」の対象として、鉱石から精製した金属、金属粉、マスターアロイ(中間合金)などが挙げられている。対象元素には、リチウム、コバルト、ニッケル、ウラン、17種類のレアアースを含む。さらに、それらから派生する製品として、半導体ウェハー、バッテリー素材、永久磁石、電動モーター、風力タービンのブレード、スマホ、高精度光学機器なども対象となる。

トランプ氏は、「アメリカがこれらの鉱物を海外から調達できなくなれば、関連する製造基盤に深刻な供給不足が生じ、商業面でも防衛面でも需要を満たすことができなくなる」と警鐘を鳴らしている。

この大統領令に基づき、商務長官は1962年の「貿易拡張法」第232条に沿って以下の7項目について調査を実施する。

  1. アメリカが重要鉱物および派生製品をどの国から、どれだけ輸入しているか
  2. 各供給国に関連する具体的リスクの種類を確認、とくにリスクの高い国からの供給についての評価
  3. 加工済み重要鉱物について、供給国による略奪的な経済戦略、価格操作、市場操作の歪み効果の分析。
  4. アメリカの製造業における実際の需要
  5. グローバルなサプライチェーンのレビューとリスク評価
  6. アメリカ内における現行および潜在的な加工能力
  7. 加工済み重要鉱物および派生製品の輸入総額および国別の輸入額

調査の中間報告は90日以内、最終報告および政策提言は180日以内にホワイトハウスに提出される。報告を受けて、政府は関税の引き上げや輸入制限、国内加工・リサイクル産業の育成など、複数の政策措置を検討する見込みだ。

対中圧力を強化 中共の「資源兵器化」に歯止め

今回の措置は、米中貿易戦争における次の段階ともいえる対応であり、中共による資源支配に対する明確な反撃と位置づけられる。

トランプ政権はこれまでにも、戦略資源の国産化を推進してきた。3月20日には「国防生産法(DPA)」を根拠に、重要鉱物の採掘・加工・製品化の加速を命じる大統領令に署名。連邦所有地での開発を優先するよう指示し、政府機関に対しては許認可の簡略化と、国防総省およびアメリカ国際開発金融公社(DFC)を通じた資金援助の体制強化を求めた。この政策は、レアアース、リチウム、コバルト、ニッケルなど、さまざまな重要鉱物を対象としている。

アメリカはレアアースやコバルト、ニッケル、リチウムなどの鉱物加工で中国に大きく依存している。たとえば、アメリカにあるレアアース鉱山で採掘した原料も、精製は中国で行うのが現状だ。コバルトやニッケルの製錬施設は国内にほとんどなく、リチウムや銅の精錬能力も限られている。

こうした中、中共は供給の主導権を外交カードとして活用。2023年12月には、アメリカへのレアアース加工設備の輸出を禁止し、2024年にはガリウム、ゲルマニウム、黒鉛、レアアース永久磁石の輸出管理を強化した。さらに2025年4月には、複数の重要レアアース金属の世界向け輸出を停止すると発表している。

ホワイトハウスは声明で、「アメリカは今なお、重要鉱物の供給を敵対的な国家に依存しており、経済的な脅迫にさらされる危険がある」と警告した。

海底鉱物の備蓄も検討 脱中国依存へ新たな一手

今週、一部メディアは、ホワイトハウスが太平洋の海底にある鉱物資源を国家備蓄として確保するための新たな大統領令を検討していると報じた。中共の資源支配をかわすため、アメリカは陸上以外の供給源確保にも本格的に動き出している。

すでに米商務省は、貿易拡張法第232条に基づき、銅鉱、半導体、医薬品、木材、自動車といった複数分野で国家安全保障調査を開始しており、今回の「重要鉱物調査」は中国への戦略的圧力の一環とされる。

この政策は、エネルギー、EV、AI、高度製造業など、多くの先端産業に影響を与える可能性がある。ホワイトハウスは「アメリカは持続可能で強靱かつ手頃な供給体制を構築しなければ、将来的に国家の緊急事態に対応できないリスクに直面する」と強調している。

陳霆