欧州連合(EU)は、中国から大量に輸入される低価格で品質に問題のある製品に対し、規制の強化を進めた。欧州委員会は4月16日、2024年の「セーフティ・ゲート(EU域内で販売される危険な非食品製品を監視する早期警告システム)」の年次報告書を公表し、年間の警報件数が過去最多となる4137件に達したと明らかにした。
同報告書によると、健康リスクが最も多く報告されたのは、化粧品で全体の36%を占めた。次いで、玩具(15%)、電気製品(10%)、自動車関連(9%)、化学製品(6%)が続く。危険とされた製品の約40%は、中国からの輸入品だった。
特に問題視されているのは有害化学物質で、報告された化粧品のうち97%に、欧州で禁止されている合成香料「BMHCA(リリアール)」が含まれ、リリアールは、皮膚への刺激や生殖機能への悪影響が懸念されていた。
また、装飾品に含まれるカドミウムやニッケル、鉛といった重金属、ボディオイルに含まれるアレルギー性香料、衣類などの製造過程で使用される有害な可塑剤(プラスチックを柔らかくする化学物質)も危険要因として指摘された。
この報告書は、中国系越境ECプラットフォームTemuやSHEINなどの激増する販売に対して、EUの対応の一環として公表された。
2024年には、40億件以上の小包がEUの消費者に届けら、その約9割が中国から直接発送されたものだ。これらの商品の多くは、価格が150ユーロ未満であることから、関税免除対象となり、検査を受ける機会が限られていた。
この状況を受け、EUは今年2月に、150ユーロ以下の商品に対する免税措置の廃止を提案。また、ECサイトなどで販売される危険・違法商品について、販売プラットフォーム事業者に法的責任を問う規則の導入を検討していて、さらにEUとして共通の、税関機関を設立する方針も示した。
EU欧州委員会は、加盟国の市場監督当局と連携し、オンライン製品の安全性を一斉に調査する初の取り組みも進めていて、違反が疑われる販売サイトを横断的に調査し、EUの「一般製品安全規則(GPSR)」に適合しない商品を特定し、対策を講じる方針だ。
消費者保護を担当するマイケル・マクグラー欧州委員は、「近年、オンライン販売が急増しているが、多くの製品がEUの厳格な安全基準を満たしておらず、消費者の安全を脅かしていた」と警告。そのうえで「これらの不適合製品の大部分は、中国製である」と明言した。
マクグラー氏はまた、越境・反復的な違反に対して、EU委員会が直接対応できるよう、消費者保護関連の規則見直しと執行権限の強化も検討していると述べた。
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