ベッセント米財務長官は15日、中国が保有する米国債を利用してアメリカ経済に打撃を与えるリスクはないと明言し、中国による米国債の「武器化」を巡る懸念を一蹴した。これはヤフー・ファイナンスのインタビューで語ったもので、米連邦準備理事会(FRB)を含む関係機関と連携し、万が一の事態にも対応できる体制が整っていることを強調した。
ベッセント長官は、「米国債が一定の水準に達したり、外国の競争相手が米国債市場を武器として利用しようとした場合、あるいは政治的利益のために市場を不安定化させようとした場合には、我々は連携して対応する自信がある。しかし、現時点でそのような事態は発生していない」と述べた。また、「我々には強力なツールが揃っている」とも語り、米国債市場の安定性に自信を示した。
中国は日本に次いで世界で2番目に多く米国債を保有しており、2025年1月時点の保有額は約7,610億ドルに上る。さらに、米財務省が16日に発表した2月の統計によれば、中国の米国債保有額は7,843億ドルと、前月の7,608億ドルから増加している。
ベッセント長官の説明
ベッセント長官は、中国が仮に米国債を大量に売却した場合、その資金で人民元を買う必要が生じ、結果として人民元が上昇することになると指摘した。これは中国共産党(中共)政権が望む方向性とは逆であり、米国債の売却は中国にとって経済的に得策ではないと説明した。
中国は主に輸出によって米ドルを獲得し、そのドルを米国債などの安全な資産に投資してきた。中国企業が輸出で得たドルは、最終的に中国人民銀行(中央銀行)に集まり、人民銀行はそのドルと引き換えに人民元を企業に渡す。こうして中国は大量の米国債を保有することとなった。
もし中国が米国債を売却してドルを現金化した場合、そのままドルを保有していても国内経済には使えない。中国国内で支払いに使えるのは人民元であり、人民元を市場で調達する必要が生じる。つまり、米国債を売って得たドルで人民元を買うことになる。これにより人民元の需要が高まり、人民元高(元の価値上昇)につながる。
中国は輸出競争力を維持するため、人民元安を望んでいる。人民元が上昇すると、中国製品の価格競争力が低下し、輸出に悪影響が出る。そのため、中国が米国債を大量に売却し、その資金で人民元を買う行為は、自国経済にとって不利となる。実際に過去、中国政府は人民元や中国株を買い支えるために米国債を売却したことがあるが、その際も人民元相場の安定が目的だった。
このように、米国政府は中国による米国債の「武器化」による経済的リスクを否定しており、現状では米国債市場の安定が維持されているとみられる。
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