トランプ政権一期目で国家安全保障会議の副主任を務めたマット・ポッティンジャー氏と、中国担当主任だったリザ・トービン氏は最近の論考で、米中貿易戦争は21世紀の覇権を争う競争であり、中国共産党(中共)は他国とは異なる特別な標的となり、「トランプ氏の怒りの最大の矛先」となったと述べている。
この競争は、他国がどう思おうと、ほぼ間違いなく「勝者と敗者がはっきりするゼロサムゲーム」になる運命だとも指摘している。
さらに彼らは、トランプ氏が中共への態度を大きく変えたのは2020年、つまり一期目の終盤だったことを明かしている。当時、新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済や大統領選の見通しが大きく悪化していた。トランプ氏は「中国とどんなに多くの貿易協定を結んでも、米国が被った損害は取り戻せない」と語り、その原因を中共の不正行為にあると指摘していた。
ポッティンジャー氏は、トランプ氏が「もう中国とビジネスを続けられるか分からない」、「そろそろ中国と経済的に切り離すべきかもしれない」と発言したのを聞いたことがあると回想している。こうした考えは、トランプ氏の頭の中でずっとくすぶっていたようだ。
米国の経済学者、黄大衛氏は「トランプ氏は2011年のインタビューで、中国(共産党)は米国の友人ではなく、米中貿易は非常に不公平だと指摘していた」と述べている。
また、トランプ政権で関税による対中圧力を強く主張したピーター・ナバロ氏の影響もあり、2018年には中国の知的財産権侵害や企業への補助金、市場のゆがみを理由に「301条調査」が実施され、米中貿易戦争が本格化した。その結果、中国の「中国製造2025」政策は表舞台から姿を消した。
米国の1974年通商法301条は、外国の貿易慣行や政策がアメリカの権利を侵害したり、不公平でアメリカのビジネスに悪影響を与えたりする場合、アメリカ通商代表部(USTR)が追加関税などの制裁を発動できると定めている。USTRは制裁を行う前に調査をし、相手国に協議を求める必要がある。
問題の本質を見抜く
2020年、米中が第一段階の貿易協定を結んだが、その直後、中共が新型コロナウイルスの情報を隠し、ウイルスが武漢から世界中に広がった。
黄大衛氏は、「トランプ氏は、これは単なる経済問題ではなく、二つの体制やイデオロギーの対立だと見抜いた。この時から、トランプ氏は中国との交渉だけでは問題は解決しないと考えるようになり、米中関係への認識が根本的に変わった」と述べている。
米国在住の時事評論家・唐靖遠氏は「もし今の米中貿易関係が完全に逆転すれば、中共は世界第2位の経済大国の座を失い、世界制覇の野望も潰えるだろう。さらに中共政権自体が大きく揺らぎ、深刻な打撃を受ける可能性がある」と分析している。
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