4月17日、アメリカ通商代表部(USTR)は、中国が建造・運営する商業船舶に対し、高額な港湾使用料を課す方針を打ち出し、さらに非アメリカ製の自動車運搬船およびLNG輸出船の利用についても段階的な制限を導入することを明らかにした。本措置は、トランプ政権が国内産業の競争力強化とアメリカ造船業の再生を図る一環であり、中国共産党の不公正な貿易慣行に対抗する戦略的手段と位置付けられたと言う。
背景と目的
アメリカ通商代表部は、約1年にわたる調査を経て、中国共産党政権が補助金政策や産業統制を通じて海運・物流・造船分野において主導権を掌握し、アメリカの商業的利益および市場競争力に、深刻な影響を与えているとの結論に至った。中国は現在、世界の商業船隊の約5分の1を保有し、世界の商業造船能力の53%を占有しており、その規模は、他国の合計を凌駕していた。
トランプ政権は、この状況を「供給網の安全保障上のリスク」と見なし、アメリカ国内の造船業を再強化し、雇用を創出する政策として、本措置を実施した。
USTRのグリア代表は「船舶および海運は、アメリカ経済と貿易の安全保障にとって不可欠であり、中国の優位を打破するために、具体的な行動を起こした」と述べた。
新たな港湾使用料の概要
新制度は2025年10月14日より段階的に導入され、初めの180日間は業界への移行期間として、課金を免除する。その後、以下のとおり段階的に料金を引き上げる予定である。
中国建造船舶:1航海あたり、最初は1トンにつき18ドル(2025年)、以降毎年引き上げを行い、2028年には33ドルに達する。もしくは、1コンテナにつき120ドルから250ドルまで増額する形を取る。
中国籍または中国運航船舶:1トンあたり50ドルから始め、毎年30ドルずつ増加し、2028年には140ドルに達する。
非アメリカ建造の自動車運搬船:アメリカへの輸入時に、自動車1台につき150ドルの料金を課す。
LNG船舶:2028年以降、アメリカ建造船の使用比率を段階的に引き上げ、2047年には15%の達成を目指す。
課金対象は、年間で最大5回に制限され、往復運航する船舶への過度な負担を回避する措置も設けている。
例外措置と追加規制
アメリカ海事管理局(MARAD)の運輸計画に参加する船舶や、短距離海運サービス、空船での寄港、小型・特殊船舶などについては、例外規定を設け、課金を免除する。
また、アメリカ建造船舶の定義を厳格化し、主要部品および鋼材の製造工程を、すべてアメリカ国内で実施することを求め、これにより中国製部品への依存を排除し、産業の自立性を高め、さらに、中国製の港湾設備(コンテナクレーンや貨物シャーシなど)に対しても20〜100%の追加関税を検討中であり、現在パブリックコメントを募っている段階にあると言う。
産業界・労働組合の反応
今回の政策は、アメリカの主要労働組合が、2024年3月に共同提出した請願に端を発しており、労働組合側はこれを「本土造船業復活に向けた具体的な第一歩」と評価し、今後も政策の厳格な実施を注視する構えである。
一方で、海運業界や貿易団体、輸入業者からは「コスト上昇や消費者価格への波及、港湾労働への影響」などを懸念する声が上がった。特に、当初の「港ごとの課金方式」が「1航海ごと」に修正された背景には、業界の強い反発が存在した。
今後の展望
アメリカ政府は、国内の造船能力拡大とサプライチェーンの強化を長期的な目標に掲げ、同盟国にも同様の措置を促す方針を取ると言う。今回の新たな規制は、米中間の貿易摩擦をさらに激化させる可能性があり、国際物流や消費者物価にも、中長期的な影響を与えると予測される。
USTRは現在、パブリックコメントの受付を進めており、最終決定後180日を経て制度の本格施行に踏み切る見通しだ。
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